「板」はどうして「丸い」のか? -カードゲームの言語学-
2019,PHP新書.
という冗談はさておき、今日Twitter上でとあるアンケートを取ってみました。
【DMPの方に質問です】
— レッド@yk800 (@yk800RED) 2021年6月23日
気になったのでアンケートしてみます
拡散にご協力いただけると嬉しいです
あなたが「ルーター」という言葉を使う時、
「ルーター」という単語の話。
最近のデュエル・マスターズのデッキ解説動画やnoteなどでは、《ア・ストラ・センサー》や《堕呪 ゴンパドゥ》などの「デッキトップn枚を見てその中から1枚を手札に加えるカード」をルーターと表現している例が散見されるようになっています。
これ自体は正直意味が伝わればいいのでなんでもいいと思うんですが、僕は「ルーター」という単語を「引いて捨てる(捨てて引く)」カードだと認識していて、その語源も知っているのでちょっと違和感があったんですよね。
もともとMTGに《マーフォークの物あさり/Merfolk “Looter” 》ってカードがあって、その能力にあやかって「カードを引いて捨てる」能力を持つカードをLooterって呼ぶようになったのがルーターという言葉のおこりなんですよね pic.twitter.com/v21kIVnY27
— レッド@yk800 (@yk800RED) 2021年6月23日
だけど今のデュエマでは「2ターン目、3ターン目にキーカードにアクセスする(=手札の枚数を増やすことを目的としていない)手札調整カード」全般を「ルーター」と呼ぶ流れができてるように見える
— レッド@yk800 (@yk800RED) 2021年6月23日
なんでかなって思って考えたんですけど、多分Wi-Fiルーターみたいな「中継機」って意味合いでのルーター=Routerの方が現代日本人の耳に馴染み深いからなのかなと
— レッド@yk800 (@yk800RED) 2021年6月23日
「キーカードにアクセスする」っていう使用意図と中継機のイメージがハマって、デュエマにおけるルーターは徐々に意味が変わりつつある
ちなみに、この一連のツイートのうち「ルーター」の語源以外は一切根拠がない完全なる想像ですし、おそらく正しく起源を遡って「どうして、どのような経緯で意味の変質が起こったか」というのは調べようがないです。テキストメディア主体の文化であればともかく、動画メディアが発信源だとすれば、誰が言い出したのかを調べることすら困難です。
動画メディア、娯楽的な意味では優れてるんですけど、検索性の面で信じられないぐらいに劣っているんですよね。今のような動画メディア一辺倒な時代の記録って相当脆いので、やっぱり重要なことをテキストで記録する文化は必ず守られるべきだよな……と改めて思ったりしました。という余談。
真相のところは正直わからないんですが、Twitterアンケートの結果(765票もの投票ありがとうございました!)、だいたい50%の人が原義的な「手札入れ替えカード」として「ルーター」を使っている一方で、30%の人は新たに発展した意味である「キーパーツを探しに行くカード全般」を「ルーター」と呼んでいるようです。
この割合、個人的にはかなり多いと感じました。
もう数年もすれば、デュエル・マスターズにおける「ルーター」の意味は完全に変わってしまってもおかしくなさそうです。
あってる間違ってるではなく、めちゃくちゃ面白い流れだなって
— レッド@yk800 (@yk800RED) 2021年6月23日
DM言語学
「言葉は生き物」というのは言語学界の金言ですが、いわゆるスラング・俗語は、意味さえ通じるのであればいくらでも変質してしまいます。
完全なものとは言えませんが、このような形で意味の変化しつつある言葉を眼前で捉えられているのは非常に幸運なことだと思いますね。
充実した休日だった。それでは。