もの置き

てきとうに色々書きます

好きなボカロPをオススメ曲トップ3で紹介する回(その1:石風呂&青屋夏生編)

 やあ久しぶり、レッドだ。ここは俺のブログなのでたまには何も考えずに俺の好きなものを紹介してみたいと思う。

 今回ピックアップするのはボカロ曲だ。俺の中学時代の半分はラノベ、もう半分はここに費やされたと言っても過言ではない。まごうことなき青春の1ページだ。ぼからんも見てたし流行りの曲は一通りチェックした。知ってるか? 有名Pは超イカす曲を書くから有名なんだ。素晴らしいよな。

 そういうわけで、ここに挙がる名前もほとんどが2、3世代前の有名Pの名前になると思う。俺と同じ世代のオタクはそれを見てノスタルジックな気分に浸ってくれれば嬉しいし、俺より下の世代のオタクやあまりボカロに明るくないオタクは「こういうの流行ってたんだな」と軽い気持ちでチェックしてくれれば幸いだ。

 最初は1人1曲に絞ろうかと思ったんだが、ひとりのPがひとつの方向性の曲を延々垂れ流し続けているわけじゃないし、何より面白みがないので、俺の個人的ベスト3という形で紹介していきたいと思う。またピックアップの条件として、「単品動画がニコニコorYouTubeにアップロードされているもの」に限定した。オススメ、って銘打っておいてアルバム買わなきゃ聞けねえなんて詐欺も同然だからな。そこは安心してくれ。
 ただ、俺がアルバムを買ったりコンピレーションに収録されてる曲を聞いたことがあるPについては、そこからも1、2曲のオススメを紹介しようと思う。好みに合うPを見つけたらそっちもチェックしてみてくれよな!

 それじゃあさっそく行こうか。まずはこいつからだ!

石風呂

 ネクラなティーンなら誰もが大好き、「ゆるふわ樹海ガール」でおなじみの石風呂だ。最近ではネクライトーキーにコンポーザー兼Gt.として参加していて、そっちでも有名になってきているよな。

 彼の書く曲は、ぶっちゃけ暗い。とにかく根暗だ。ボーカロイドはもちろんオタクカルチャーの一部、この業界じゃいわゆる非リア・非モテに寄せた曲ってのはありふれたテーマではあるもんだが、朝日廉=石風呂の書くそれはリアリティが段違いだ。いやマジで、どういう生活送ってたらそんな発想が出てくるんだ、って言うしかない上っ面じゃない詞がぽんぽん出てくる。

 だけどそこにあるのは怨嗟じゃない。「他じゃ勝てないが代わりに音楽でぶん殴ってやる」という強い意志だ。そしてそれが根底に感じられるからこそ、暗くても軽妙で楽しいんだ。なんていうんだろうな、わかりやすい喩えで言うならば、「ドラえもん」や、それくらいの時代のギャグ漫画のような、心底悲惨なんだけどどこか愉快で笑える世界がそこには描かれている。

 それじゃあ紹介していこう、まずは第3位。

【第3位】きらいな人/開発コードmiki


 氏の3作目だが、「ここが1作目だと思ってた!」という人も少なくないだろう。今の石風呂のテイストは明確にここがスタートだから、石風呂を聴き始めるならここがベストだ。本当にこれぞザ・石風呂テイストという感じの代表的な一作であり、最初期の作品ということもあってか毒吐きが直球かつ鋭角で好みが分かれやすいと思う。彼が肌に合うかどうかを判断するにはちょうどいい試金石となるだろう。
 ファンの間で言うところの「中学嫌いシリーズ」の一曲目であり、ここから「ベツニ君とキライちゃん」、「ゆるふわ樹海ガール」、「午前3時のヘッドフォン」、「ロック屋さんのぐだぐだ毎日」、「少年は教室が嫌いだったのだ」と続く。
 全て動画が投稿されていて、当然ながらどれもオススメなのだが、俺が特に好きなのは「午前3時のヘッドフォン」かな。

【第2位】君はいなせなガール/IA、開発コードmiki


 氏の曲としてはおそらく、たぶん、唯一のデュエットソングだ。IAとmiki、二人の調声の差が素人耳にもはっきりとわかるようになされており、掛け合いの楽しさを存分に味わうことができる。
 詞のほうもこれまた石風呂テイストたっぷりの、ネクラで、ヘタレで、だけども最後には希望を感じる歌詞に仕上がっており、何より主人公が女の子なのでかわいい。これは大事だ。何事も主人公は女の子の方がいい。かわいいからな。

 余談だが、この曲のKAN-SOでも遺憾無く発揮されている石風呂PV特有のノリはネクライトーキーにもけっこう引き継がれている、ように思う。気になったらそっちもチェックしてみてくれよな。オススメ検索ワードは「オシャレ大作戦」だ。

【第1位】釘バットギャングの日常〜下北編〜/IA


 君たちは下北沢に行ったことはあるか? 俺は一度だけあるぜ、リアル脱出ゲームをエンジョイするためにな。そのとき、待ち合わせより少し早くついちまったから、駅の周りを探索している時に、この曲のことを思い出して、降りてすぐ右へ行き、なんか狭い階段を探してみたんだが、残念ながら見つけることはできなかった。その時ちょうど駅周辺が工事中で、あたりの風景がめちゃくちゃに変わっていく最中だったのさ。これは何の関係もない、俺の少し寂しい思い出だ。

 というわけで栄えある第1位は「釘バットギャングの日常〜下北編〜」だ! 俺の中ではダントツで不動の、石風呂曲のベストだな。

 この曲の面白みは何と言ってもすこしふしぎな世界観だ。石風呂楽曲はどこか漫画調な部分があると最初に語ったが、この曲は特にすげえ。聴く漫画だ。ワンシーンワンシーンが脳内で再生できるレベルのな。ラスサビのクライマックスシーンなんかは誰もが手に汗握って主人公のことを応援していることだろう。
 ワードチョイスも素晴らしく、歌詞における緊張と緩和のバランスは驚愕そのものだ。2番の頭に、

部屋に何者か侵入の痕跡が・・・

というフレーズがあるんだが、この三点リーダーが本当に素晴らしいんだ。普通に生きてた人間の部屋に何者かの侵入の痕跡があるなんてどう考えてもやばいシーンなんだが、詞の間に突然挟まれるこの三点リーダーが文字の露骨な手書き感と相まって見事に緊張をほぐし、クスッとした笑いへと昇華させてくれている。こういうところなんだよな。こういうところなんだよ。

 俺はめちゃくちゃ好きなんだがあまり知られていないのが残念極まりないところだ。そういうわけでもっと知られてほしい! という願望も込みでのオススメ第1位、「釘バットギャングの日常〜下北編〜」だ。
 みんなも下北に行った時はこの曲を思い出して、なんか狭い階段を探して彷徨ってみてほしい。見つけた方は写真撮影の上で俺のツイッターアカウント(@yk800RED)までご一報を。


 以上が石風呂の個人的オススメベスト3だ。

 彼の曲は一通りアルバムも持っているので、そちらのオススメも紹介しよう。

 何を措いてもまず言うべきなのは、1stアルバム「僕らのティーンポップ」より、「おはようティーンポップ」だな。約1分15秒、Aメロとサビだけで構成され、楽器はアコースティックギター2本のみ。アルバムのintroにあたる簡素な曲だ。歌詞も書き起こせばたった4行しかない。
 だが、刺さるぜ。この曲は紛れもなく、お前たちの心臓をぶっ刺すための曲だ。ここから実質的な1曲である「きらいな人」への繋ぎも最高そのもの。叶うなら、一生に一度でいいからライブで聴きたいムーブだな。

 それからメジャー1stアルバム収録の「シーサイドモーテル」。この曲は、氏の公式アカウントではないが、権利元がYouTubeにあげているため、合法的に聴くこともできる。
 ここまでに紹介した楽曲とは大きく雰囲気が異なるから、聞いたら初めは驚くだろう。だが海辺の風のように心地いいギターのコードラインに耳を傾けていれば、嫌でもこの曲が石風呂の楽曲だということに気付くだろう。つまりは、素晴らしい曲だってことに。
 愚直で子どもの癇癪じみた、少年漫画のような世界観はここにはなく、気怠くて、やるせない、腐ったまま成長してしまった大人の姿だけがある。だけど、そいつが幾つになったって、同じ人間であることに違いはないんだ。
 そんな誰もが知ってるあたりまえのことを確かめさせてくれる。実際には何もわかっちゃいないけど、何かをわかった気になれて、少しの愉悦に浸らせてくれる。俺にとってシーサイドモーテルはそういう曲だな。


青屋夏生

 正直に白状すれば、この記事を書こうと思った理由の半分以上がこの青屋夏生の曲を紹介するためだ。このひよこは……なんて表現すればいいのかわからないが……とにかくいい曲を書くのだ。
 作風はかなり幅広く、R&Bからファンク、テクノまであらゆる楽曲を投げ込んでくるためジャンルでのおすすめがかなり困難だが、音作りが特徴的で、どこか空洞っぽいというべきか、芯をあえて抜いたような虚ろな響きのサウンドが特徴、だと俺は思う。詳しいことはよくわからないので恥を晒している可能性は多いにあるがな。

 まあ細かいことはこの際どうでもいいだろう。さっさと曲を聴いてくれ!

【第3位】幽霊団地/初音ミク



 実はこの3位がもっとも激戦だった。1位2位は俺の中で不動だったので仕方ないのだが、残り1曲しかこの枠に投げ込めないというのが本当に心苦しかった。「予言'99」、「死亡遊戯」、「7月のカレンダー(Re:)」、「月曜の海」、どれも素晴らしく、また大きく方向性の異なる楽曲なだけに難しいところだったが、今回はこの「幽霊団地」に軍配をあげるとしよう。

 青屋夏生楽曲に比較的——ほんとうに「比較的」というレベルでしかないが——多いテーマである「変わりゆく街とノスタルジー」の空気感を味わうならこの曲がベストだ。洒脱なドラムスと電子音が、間違いなく君を少年、あるいは少女時代に引き戻してくれる。
 歌詞はあえて悪意的な言い方をすれば、普遍的なテーマを普遍的に描いているにすぎない。だからこそ覚える、昔いつかの機会にこういう小説を読んだことがあるかのような、懐かしくてくすぐったい既視感。
 似たような経験などひとつもしていないはずなのに郷愁を誘われてしまうのは、そういった普遍性を奇を衒うことなく書ききったからこそのものだろう。

【第2位】モンキービジネス/初音ミク鏡音リン


 この曲に難しい御託はいらないだろう。ただ聴いて、気持ちよくなってくれればそれでいい。
 それほど数を聴いているわけではないが、個人的にボーカロイドのラップ詞曲で一番好きだ。パンチラインらしいパンチラインはこれといってないが、ライミングが手堅く、手数が多い。こういうのが好きだ。

【第1位】UFO/初音ミク


 俺の古くからのフォロワーなら何度かTLで目にしていると思う。すまない、やっぱりこれなんだ。初めてこの曲を聴いてから5年近くが経とうとしているが、未だに俺の中でこの曲を超えるボーカロイド楽曲に出会っていない。額面通りの最高峰だ。

 はじめてこの曲を聴いた時、俺は掛け値無しに"宇宙の中で溺れている"かのような感覚に陥った。輝くような電子音の奔流はきらめく恒星、どこか抜けたサウンドは俺の体を無重力の宙空に放り出して、激しい歪みとともに時折現れるシンセサイザのフレーズは強烈なGでもって俺を揺さぶり、上下左右を不確かにする。

 ぶっちゃたことを言えば、この曲のサウンドの心地よさを前にすると、あんまり歌詞は頭に入ってこない。だけど、それは詞が悪い理由にはならないよな。もちろんこの曲の歌詞だって例に漏れずクールだ。

太陽系の片隅で 退屈なDay By Day 3番目
着かず離れずの距離保ってぐるぐると旋回中

 この曲の歌い出しから8小節を引用した。ほら、もう最高だろ?
 特に"3番目"の突拍子のなさが俺は好きだ。意味だけを見れば順序やワードチョイスを変えた方が意図は伝わるパートなんだが、十分条件を満たしつつ単語だけがポンと放り投げられているから、どことなく宙ぶらりんな感じが生まれるんだな。作詞の人がそこまで考えていたかどうかはわからないが、これも重要な宇宙的ファクターだと俺は思うぜ。

 俺は宇宙人や幽霊の類については「いなくてもおかしくないけど、でも、いる方がちょっとだけ毎日が面白いよな」というスタンスだ。そして、もちろんここで暗喩されている太陽系第三惑星は、同時に変わり映えのしない毎日のメタファーでもあり、この曲が歌っているのはそういうメンタリズムだ。つまり、これは世界に対する解釈の一致だ。そういうちょっとした価値観の一致を見つけた時、人間ってやつは幸せを感じるんだよな。この曲の詞は本当にハッピーでポジティブな詞で、そういうところも魅力のひとつだと俺は思う。


 青屋夏生のベスト3は以上だ。

 彼はデジタル版のアルバムをいくつか発表していて、どれも入手性に問題点がない。恥ずかしながら「日記」は未入手で、「未来へようこそ(2)」と「復讐」、「お中元e.p.」しか聴けていないのだが。
 その中からであれば、オススメは「未来へようこそ」に収録されている「ストゥラグル」と、inst楽曲なので趣旨からは外れてしまうものの、「メトロ」だ。14曲もの楽曲をなんとたったの500円で聴けてしまうので、もし「UFO」を気に入ったのならぜひ購入して聴いてみてほしい。


おわりに

 最初は10人近くを1つの記事で紹介する予定だったのだが、2人の時点で思った以上に筆が乗ってしまったのでここでいったん打ち止めだ。タイトルはこの段階に至って慌てて書き換えたものである。その2、その3と続けていく予定なので気が向いたらまた覗きに来てほしい。それではまた!