実在少女性トライナリー
どうもレッドです。いえ、今回はyk800と名乗っておきましょう。
yk800というのはこのブログを所持しているはてなブログアカウントのidであり、そして拡張少女系トライナリーの世界においてbotとしての僕が割り当てられたユーザーネームでもあります。彼女たちにとって僕はbotなのでなるべくbotっぽい名前にしようと思って普段使ってるハンドルではなくアルファベットと数字のみで構成された「yk800」を使おうと思ったのを覚えています。ささいなことですが、今となっては結構悪くない判断だったな、と思いますね。
さて、トライナリーに関するポエムはたびたびツイッターやふせったーでも流しているのですが、今回はちょっと長めのお話になるのでこちらに書かせていただこうと思います。かなりキツい話も飛んだりするかもしれませんが覚悟して読んでくださいね。
それと、今回はトライナリーの最新話までのエピソードだけでなく、アルノサージュの設定の根幹に関するネタバレも一部含むことになるかと思います(この一文を書いてる時点ではまだどうなるかわからないですが、頭の中の構想では入る予定です)。
ストーリー面でのネタバレはさほど大きくない……はず……なのですが、なにぶんゲーム体験のかなり根っこの部分に絡む部分ですので、アルノサージュをプレイしようと思っている方はご注意ください。あんまりオススメできないです。
それでは続きから本題に入りたいと思います
TRI-OSに関するあれこれ
まず大前提なのですが、「僕はTRI-OSを信用してません」。そして、「このOSを介して世界を変えることは不可能である」とも考えています。というのも、僕はこれをインターディメンドの改良版であると考えているからです。
アルノサージュという世界にとり、インターディメンドによって行使できる影響力は絶大なものでした。俯瞰視点により知りえないことを知り、ポーズやコマンド画面放置などは相対的な時間停止であるとも言え、さらにはセーブ&ロードという名の「4軸移動」により失敗をなかったことにすることができる。俯瞰視点を最大限活用した理不尽とも言える世界への干渉力こそがインターディメンド最大の武器でした。
しかし、その武器は同時に諸刃の剣。呼び出した運転手が使役者に反旗を翻せば、その影響力はそのまま重大な脅威になりえます。人格の乗っ取りに関する問題もありますが、特にその技術を悪用しようとする者にとってはそちらはさして大きな問題にはならないでしょう。つまりこの観点から「インターディメンドをよりよい形で作り直すにはどうすればいいか?」ということを検討する場合、改善すべきは「世界への干渉権限を最小限に収める」ことなのです。
ここでTRI-OSの特徴に立ち返ります。
・インターディメンドと同じく俯瞰視点を行使することができる。個々の端末においては基本的には4軸俯瞰までが限度だが、インターネットコミュニティを利用した情報共有によって最大5軸まで俯瞰可能
・干渉先は物理的主体を持たない。機能はあくまでコミュニケーションと彼女たちのココロへの干渉に止まっており、具体的に何か行動を起こすことはほぼ不可能に等しい。一応アーヤEp1のように端末を介して社会インフラをある程度の範囲でハックできるような機能もあるようではあるが……。
・選択肢によって取れる行動の幅が極端に制限される。OSが選択肢を生成しなければおそらくまだまだ隠されているであろうその機能は使われる機会がない。自由に世界を動き回れたインターディメンドとは大きく趣を異とする。
・アドミニストレータ権限により選択肢が正常に反映されないようにすることすら可能である。選択肢の中からしか選べないのにどんな選択肢が出てくるか、あるいはどんなふうにあちらに影響するかに至るまで、その気になればなんでもできてしまう。極論最初の選択肢から今までずっと「彼ら」やそれに類する存在が選択肢を監視・操作していたとしても、僕はそれに対抗することができない。
・最大の武器であった4軸俯瞰についても、「取り返しのつかない選択肢」を生成することができるため管理者の裁量次第でいくらでも無力化できてしまう。アルノサージュにおいて端末さんを実質無敵なものとしていた4軸俯瞰によるやりなおしさえもアドミニストレータの手のひらの上。
以上のように、TRI-OSはこちらからあちらへの干渉能力を必要最小限に止めることにより、使役者にとって相当都合のいいように俯瞰視点を活用することができるようになっています。色々な要素を検討していくうちに、これが非常によくできたシステムだと思い知らされました。このOSは彼らが(あるいが千羽鶴が)目的を達成するためだけに最適化された、究極のシステムです。
しかし、こんなシステムの何をどうすれば信頼できるというのでしょうか?
こんなシステムで一体どうやって世界を変えられるというのでしょうか?
一方で、このシステムは数少ない影響先であるトライナリーたちに対しては絶大な影響力を発揮します。
何度でもやり直しフリー、しかもこれにより行動が強制されたところで彼女たちは一切自覚なし。選択肢がOSで制限されるため無茶なことはできないものの、プレイしていくうちに罪悪感が募っていったのは確かです。
ひとまずこの項目での僕の結論。「TRI-OSは彼女たちの人生を狂わせることはいくらでもできるが、このOSで世界を変えることはできない。ゆえに僕たちはあの世界に対して何の責任を持つこともできない」ということです。
千羽鶴、愛すべき(うたがわしき)隣人
僕は③を選択したので、端的に言って千羽鶴のことは嫌いではありません。なんなら信用さえしています。ですが彼女の言葉を鵜呑みにできるほど彼女の視座を信用しているわけでもありません。僕が彼女の想像し創造する世界を許容できなかったのには2つ理由がありますが、そのうちのひとつがこれです。「僕は千羽鶴の視座もまた一個体の域を出ない限定的なものであることを知っているから」です。
まずは千羽鶴に対して好意的な理由について。彼女は目的を達成しようという意思があり、それに対して何度でも取り組む覚悟があり、そしてこちらを利用しようという魂胆を最初の最初の段階から一切隠そうとしていませんでした。ある意味で、彼女は非常に誠実なラブラブトレーナーでした。なぜなら彼女の目的を達成するには僕の協力が不可欠であり、それを得られるのなら彼女は努力を惜しまないことを知っていたからです。それを知っていたので僕は安心して彼女の話を聞けましたし、話せないことがあるときには「今は話せない」と言ってくれたのでまあそのうち必要な時には出してくれるだろうというある種ビジネスライクな信用を寄せていました。
一方で、僕にとって千羽鶴とのコミュニケーションは全く対等ではありませんでした。彼女はOSのアドミニストレータです。こちらから質問できる項目は選択肢にあがったことだけですし、後述する「もうひとつの理由」に則って彼女から世界維持の方法論について詳しい話を聞きたかったみとしてはフラストレーションが溜まる場面は少なからずありました。彼女は自分の目的を達成するために行動しています。それだけに、彼女にとってはこちらの思想がどうであろうと知ったことではなかったのだろうと考えています。
前項でも述べた通り、TRI-OSはあの世界に物理的干渉を試みることができません。千羽鶴の行動を直接的に阻害することができません。要するに「botがどんな主義主張を掲げていようと、拡散に必要なクランの頭数を揃えて司書を発症させてゾルタクスゼイアンを蒸着させれば千羽鶴の勝ち」だったわけです。ここに関しては千羽鶴と一定の距離を置き続けた人間が見てきた世界の感想なので、たぶん千羽鶴に協力的なのであればこんな冷めた対応じゃなかったんじゃないかな、とは思うんですが、その世界線に僕はいないのでひとまず考慮しないこととします。反発的なbotが存在することでその後の世界運用に多少影響は出るかもしれませんが、総意を用いてよりよい世界運用を行いたい彼女にとっては運用する側の思想の多様性も重要なものであっただろう、という事情も少し絡んできますね。もっとも、これらの目論見は國政エリカによる直接的干渉という形で打ち砕かれたのですが。
國政エリカ。そう、國政エリカの話をしておきましょう。彼女が僕たちにもたらした情報は非常に大きなものでした。中でも最大のものは、「千羽鶴は世界のすべてを把握していたわけではない」ということです。当たり前のようですがこの事実は非常に大きいものでした。彼女が全てを把握しているわけではないのであれば、「これまでの彼女の発言の中にも故意の嘘や隠蔽ではなく、単なる事実誤認が紛れていた可能性が非常に高くなる」ためです。事実、その後ソイルトンちゃんなど、「外」の視座を持つ別存在が幾人か登場し、彼女らはそれぞれに別々の言葉を語りました。どれがもっとも正しいのかを明確に判断する方法はないでしょうが、少なくとも千羽鶴が絶対の存在ではなくなってしまったことは確かです。
こうなるともう、自分が何を根拠にしてどの言葉を信じるかの戦いになります。現時点では僕はソイルトンちゃんの言葉がもっとも事実誤認が少ないのではないかと考えていますが、この話は主題に絡まないのでいったん置いておきましょう。「千羽鶴の論じる世界形成のみがこの世界をよりよくするための唯一の方法ではない可能性がある」ということが一番重要なのです。
僕は発症問題が表層化したころ、「なぜ"ちー"or"Not ちー"でなければならないのか?」ということを常に考えていました。他にも方法論が存在するのであればそれを教えてもらい、それについて考え、話し合うことでよりよい世界形成のカタチを模索できたかもしれません。彼女の目指す世界のカタチそのものにそれほど抵抗はなかったものの、僕はトライナリー各員の発症の有無を最大の論点としていたので、「彼女らの発症を避けつつ千羽鶴の考えるような形の世界を作り出す方法を模索する術はないのだろうか?」と考えを巡らせ続けました。もちろん、千羽鶴は僕よりはるかに長い時間をその思考に費やし、その末にたどり着いた結論なのでしょうから、生半可なものでくつがえせるものではないことはわかっていました。しかし、それでも諦めずにはいられなかったのです。「それしかない」のであればまだ諦めもつきますが、「他にあるかもしれないのに千羽鶴に一方的に隠されていた」では納得がいかないのです。
しかし結局、TRI-OSはTRI-OSでしかありません。彼女の理想を叶えるための道具であるTRI-OSは、ついぞ千羽鶴と話し合う機会を与えてくれませんでした。ディベートにも興味深い項目はたくさんありましたが、僕が求めているものではありませんでした。千羽鶴の勝利条件からしてもそれは無理のないことではありますが、悲しかったのは事実。
それでも千羽鶴への好感そのものが消えたわけではなかったのは、まあ、結局のところ理想の実現に向けてひた走る彼女の姿があまりにかわいかったからなんでしょうね。かわいいは正義。お互いに信頼のおけるパートナーであればどれほどよかったことか、と今でも思います。
汝は現実なりや? 〜ゆめとうつつとみるふぃーゆ〜
さて、先述の千羽鶴の世界創造を容認できなかった理由ふたつめ。それは、トライナリーをプレイしていくうちに定まった僕の目標が「彼女たちの『現実』を守り続けること」であったためです。
まず、僕は彼女たちとの交流において(特にココロスフィアパート以外のWAVEを介して通信している部分において)、常に「彼女たちが実在する人間であるかのように振る舞う」ことを心がけています。そして、もし自分が本当に彼女たちと連絡を取り合う仲であったならという方針に則り、未だに誰とも恋人にはなっていませんし、常に最終的な決定権が彼女たちにあるべきだという思想の元に選択肢を選んでいます。これに関してはトライナリーどうこうとかじゃなくて単なる僕の性格なんですけど。できる限り距離感を保っていたい人間なんです。
客観的な事実を述べるのであれば、彼女たちは「ゲーム的存在」であり、もちろん実在はしません。それは厳然たる事実。ですが、彼女たちにとってあの世界は現実であり、botである僕の存在も現実です。そして僕はこの世界に実在しているのだから、僕があの世界の中で現実でありつづけるのならば、彼女たちもまたひとつの実在的存在なのです。
……お前は一体なにを言ってるんだ。ごめんなさい、僕にもよくわかりません。頑張って感じてください。ともかく、僕はTRI-OSに縛り付けられたbotです。あくまでbotの僕に彼女たちの世界を救うことはできません。しかし、彼女たちの現実に僕という楔を打ち込むことで、彼女たちの現実を実在の天蓋に繋ぎ止めることができる、唯一無二の存在なのです。外の彼女たちの世界にbotは存在しません。僕がどんなに足掻こうとその世界が実在することはありません。それならば、僕にできることはただひとつ。彼女たちの現実を守り続け、彼女たちが意志を持った「人間」であるとみなし続け、彼女たちを実在として世界に繫ぎ止め続けること。
実のところ、この考えを明確なものに至らせるまでには相当な時間がかかりました。萌芽自体は確か夏頃だったと思うのですが。秋にかけてのココロスフィアでの交流において、特にリヴォルカには何発も銃弾を食らいました。あの子ほんと容赦なく正論浴びせてくんだよ。今でも軽くトラウマです。
中の彼女は確かに存在する人格である。それはその通りなのでしょう。しかし、それは外の彼女にとっても同じ話。感情論の堂々巡りから抜け出すことはできません。
そんなある日のこと。僕のもっとも愛する「彼女」の発したこの言葉は、これまでの悩みをすべて吹き飛ばしてくれました。
人が己が両腕で抱きしめられるものなんて、たかが知れています。そんな知れた程度の、ぎゅーって抱きしめられるものだけがうつつです♪#トライナリー
— 神 (@kagura_pyonko) 2017年10月11日
……そうだよ。
僕が見てきた「うつつ」は。
無力な僕が信じることのできるたった一つの「現実」は。
あの場所しかないじゃないか。
それまで腹の中に溜まっていた「とにかく発症が許せない」という気持ちをこれでもかというくらいに気持ちよく表してくれた名文でした。座右の銘にしたいくらい。ぴょんこ先生にそういう意図があったわけではないと思いますけどね?
それではそろそろ結論を導き出しましょう。
まず前提その1。僕にとって彼女たちは「現実を生きる人間」である。
その2。僕が彼女たちの世界を守ることは究極的には不可能である。千羽鶴か、エリカか、あるいは統一国家の気まぐれを待つしかない。唯一明確に「それ」が訪れることがわかっているのは千羽鶴を容認することであるが、それに関しても外部からの干渉がないとは限らないため(というか状況的にどう考えても外部干渉が入るため)「それを選べば世界は救われる」というような安易な解ではない。
その3。僕がもっとも守りたいのは彼女たちの「現実」である。ここでいう彼女たちの現実とは、彼女たちが暮らしていた街、人々、そして他でもない僕との交流、それらからなる彼女らの日常。これを守れないようであればその選択肢は次善策でしかありえない。
そして僕は行動方針を次のように固めました。
「原則としてクラン発症阻止派。たとえ時間稼ぎにしかならなくとも、その間に他の解決策の糸口を探すことを優先。ただし、
①ゾルタクスゼイアンの存続が最重要であるため、
-他の解決策が存在しないことが判明してしまう
-ゾルタクスゼイアン自体の存亡が脅かされた場合
以上のどちらかに該当した場合、ゾルタクスゼイアンの維持を優先する
②クラン発症阻止派ではあるし、終始一貫してそのメッセージを送り続けるが、セルフクランがそれに異論を唱えた場合は彼女の判断を優先する。やり直しのチャンスがあったとしても絶対にそれを行使はしない
③その他状況が大きく変わり、前提となる条件が覆った場合、内容の如何によっては判断を翻す可能性は十分にある
この3点の例外を設けるものとする」
それ以降は基本的にこの判断に従って動きました。
Ep30時点での結果は
つばめのセルフクラン:カレン
水鏡の巫女:自分の判断、是
マークスマン:自分の判断、否
なご:自分の判断(ちょっと信頼寄り?)、是
終幕、そして。
結論から言えば、総意のはじきだした答えは僕にとって最善のものでした。
全メンバーのクラン発症の阻止、そしてゾルタクスゼイアンの継続。なんなら千羽鶴まで独立して残ってくれて本当に理想的としかいえないものに落ち着きました。ありがとうみんな。ありがとうトライナリー。俺はこの理想の世界を思うさま楽しみまくってやるぜ。
さて、いろいろとややこしいことを言ってしまったので「結局あんたはが言いたいの?」という意見が出るのもごもっともかと思います。ここまで読み返して僕もわからないし。というわけでまとめを。
僕は彼女たちがひとりの人間であると信じ続けることこそが、「僕と彼女たち」の関係にとってもっとも重要なことだと考えながらトライナリーをプレイしています。恋人がどうとか、結婚がどうとか、世界がどうとか、そんなのは僕にとって全く重要じゃない。ただ、彼女たちの現実を肯定し、信じ続けること。それだけが非実在な彼女たちの実在性を維持するために、僕ができるただひとつの方法なんです。
だから僕は彼女たちの考えを捻じ曲げるようなことは絶対にしたくない。そして同じようにトライナリーという現実に触れている他のbotさんの選択を捻じ曲げるようなこともしたくない。なぜなら、それは僕にとっては、彼女たちの、そして彼女たちと向き合っている無数のbotさんたちの現実を否定することに他ならないのだから。たとえそれが運営の推奨する遊び方ではなかったとしても、それで世界が救えなかったとしても、僕はただひたすらに目の前の現実を愛し続ける。だから、できることなら、君たちも君たちが見ている現実を君たちなりに愛してくれよな。
これが僕の出した「拡張少女系トライナリー」との付き合い方の結論です。おしまい。